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消失点の一致。

読書というのは結構時間を食うものです。
2時間、3時間、下手したらもっともっと一つの本とにらめっこ。

好きなタイプの本があります。

本を読みおわったそのときに、物語がほどけて終わってゆく小説。
典型的にはガルシア・マルケスの「百年の孤独」でしょう。
マコンドとブエンディア一族の物語が、あれよあれよという間に
読者の読む「百年の孤独」という一冊の本に折りたたまれてゆく。
もうはじめて読んだときには、ラストシーンの鮮やかさに度肝を抜かれてしまいました。

そんな感じに素敵な読後感の小説を読みました。
スティーブン・ミルハウザーの「フランクリン・ペインの小さな王国」。
白水Uブックの「3つの小さな王国」の中の中篇です。訳者は柴田元幸。

上記のような、一種のカタルシスを感じるような条件には、
ラストにいたるまでの物語が長ったらしいことも
一つの条件にあるのでは、と感じます。
いや、誤解を受けそうです。計量的に長い必要はないかな。
読書をしているときには、時計の針が進んでいる時間と、
読者が主観的に感じる時間がもちろんあるわけなのですが、
たぶんこの主観的な時間が大いに関係ある。

「百年の孤独」は、池澤夏樹がフラクタルといったように、
マコンドをめぐるおおきな物語の中に、
無数の縮小されたサブプロットが詰め込まれています。
(ブエンディア達の孤独を物語る、いずれも同じ構造の物語です。
 ので、フラクタル、でよいのかな。)
その無数のサブプロットを僕達読者はひたすら読み続けるわけです。
もうそれこそ何時間も何時間も。

この意味で「フランクリン・ペインの小さな王国」も近しいものを感じました。
計量的には百年の孤独の数分の一の量だとはおもいますが、
物語の内的時間の圧縮率は決して引けをとりません。
ミルハウザーの特性はディーテールの書き込みでしょう。
その結果生まれてきた小説は、それこそ、
もっと直接的にフラクタルといってやってしまってかまわないかもしれない。
微細な書き込みを連ねて、さて終盤。

ふと、語りが「ほどけてゆく」。
あぁそろそろこの小説も終わりに近いに違いない、と読者は感じます。
この長く感じた読書の時間もそろそろ終わりに近づいてきています。
微細に書き込まれた物語と自分の読書時間を鳥瞰的に眺めたときに、
その二つの消失点が一致していることに気がついて、
これだこれ、うまいなぁ、してやられたなぁ、と大きくため息をつくわけなのです。

幸せ。
by vanitas-vanitatum | 2007-07-31 22:14 |
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