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by vanitas-vanitatum
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夢のお話。

昔見た夢の話をしよう。
僕がごくごく幼い頃の夢だ。
まだ近しい人がそばにいないと眠りにつけない。
眠りが分化の恐怖と隣り合わせになっているような頃。
もはや今となっては本当に自分が見た夢なのか、
それともどこか別のところで触れた物語か区別がつけがたくなっている。
そんな頃の夢。

僕は夜中にふと目を覚ます。
壁際には洋服だんすがある。その隣には絵本で一杯の小さな本棚がある。
いつもと何も変わらない部屋だが、何かおかしい。
電気を消して寝ていたはずなのに、その部屋は妙にあかるい。
蛍光灯で照らされているよりもももっとのっぺりとした明るさだ。

…夜中に目が覚めた、と書いた。
果たして本当にそうだったのだろうか。
記憶の中にはその出来事が起こったのが夜中なのか昼間なのか、
それを確かめるための手がかりは一切残っていない。
そのぐらいの年頃の、ほかの記憶はまったく残っていないわけではない。
だがそれらの記憶には自分がいて、他人がいて、
ともあれ今から思い出すと3次元的な広がりをもっている。
だがその出来事だけはほかのどんな記憶との関連性も拒絶している。
そのため僕はその出来事を夢であったと思っているのだ。

僕は何とはなしに起き上がる。
尿意を催したとか、そういう身体的な要因に基づく目覚めではない。
あらゆる肉体的な感覚とは決別した、そんな記憶なのだ。
僕は扉を開ける。
僕の住んでいた家の廊下は狭い。
扉を開けてすぐ、そこには壁がある。
僕は扉と廊下の境目に立つ。
そこでたっている。

階段を上る音が聞こえる。
僕はただ立っているだけだ。
すぐに足音は階段を上りきる。
一般的な郊外に立つ家だ。上りきるまで時間はかからない。
足音は廊下をこちらにやってくる。立ち止まる。
そして僕は気がつく。
僕の真向かいに立ったその人が、僕自身であることを。

僕自身?
そのとき僕はそう認識した。
だが、その目鼻立ちは一切記憶していない。
どんな服装をしていたか。背格好はどのくらいか。
そういう具体的な記憶は一切残っていないのだ。
そのとき確かにその人が僕自身であることを認識した。
記憶に残っているのはそれだけ。

体と体がぴったりと重なり合う。
僕は僕に部屋の中に押し込まれた。
ここからは若干の身体的な記憶が残っている。
つき押されたというわけではないく、
たとえて言うなら生暖かい水流に押し流された感があった。
僕は何かをしゃべろうとした。
あるいは叫ぼうとしたのかもしれない。
だが僕ののどは一切の声を失っていた。
ただ呼気が咽喉をこすってゆく、そのかすれた音が聞こえるばかり。
そして、妙に低い笑い声が僕の耳元で沸き起こる。
くすぐったかった。

場面は変わる。
この場面が果たして先ほどまでの場面と連続しているか自信がない。
ただ、僕の構築された記憶のなかでは、
さっきの場面と今から語る光景は連続したとはいわないまでも
隣り合わせのものとして配置されれている。

僕は部屋の真中にたっている。
布団の上にたっている。
不意に後方の頭上の天井が崩れ落ちる。
僕は振り返る。
そうすると今度は右手の天井が崩れ落ちる。

誰かが耳元でささやいているのを覚えている。
次はそっち。つぎはここ。
自分がその声に任せて体を動かしていたかは覚えていない。
気が付いたらすっかり天井は崩れ去り、そこには青空が広がっていた。
青空?

いや、周りには何もない。
頭上ばかりではなく周りを取り囲むはずの壁や、
足元にあるはずの床、布団。
「何もなかった」。

別にどうということもない夢だ。
この夢を見た日から怖くて眠れなくなったとか、そういう事はなかったと思う。
何せ本当にそれが僕自身が見た夢なのかまったく自信がない。
ただ、ある時点に気がついたらこの一連の情景が頭の中に入っていたのだ。
小学生のときこれを思い出し、中学生のときにも何とはなしに思い出した。
高校生になって記憶の曖昧性を自覚するようになってからは、
ただこの夢を直接的に思い出すだけではなく、夢を思い出す小学生の頃の僕を、
夢を思い出す小学生の僕を思い出す中学生の僕を思い出すようになった。
今この文章を書いている僕は、もちろんもっと複雑な入れ子状の記憶をもてあそんでいる。

はたしてあの夢は本当に僕自身が見た夢なのだろうか。
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by vanitas-vanitatum | 2006-11-12 23:28 | よしなしごと
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